風評賠償 製造業は福島のみ
損害賠償で、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(会長、能見善久・学習院大教授)は4日、風評被害によって製品が売れなくなったり、取引業者の来訪拒否などで損害が生じた製造・サービス業は、福島県内に限って賠償対象に含める方針を固めた。賠償範囲の全体像を示す中間指針案に盛り込み、5日の審査会で決定する見通し。
風評被害について審査会は、農林漁業・食品産業▽観光業▽製造・サービス業▽輸出−−の4分野で賠償範囲を検討している。
製造・サービス業では、福島県内で生産した工業製品の売り上げが風評被害で減ったり、同県内で計画した展示会や興行などが中止に追い込まれ、損害が生じた場合などを想定している。
また、観光業での風評被害の範囲を広げ、既に決めている福島、茨城、栃木の3県に群馬県を追加する。外国人観光客の減少に伴う減収などは、日本全国を対象とする方針(5月末までの損害)が示されている。
食品産業では、主な工場が福島県にあったり、原材料を仕入れていた県で出荷制限が出されるなど加工品が風評被害で売れなくなった場合、減収分などを補償する。出荷制限や出荷自粛が広がった茶葉については、東京を除く関東6県と福島、静岡の計8県を対象とする。【西川拓、藤野基文】
福島第1 爆発の可能性低い
班目春樹委員長)は4日、東京電力福島第1原発で水素爆発や炉心溶融などの深刻な事態が再び起きる可能性は低く、原子炉や使用済み核燃料プールの冷却が長時間停止しても同原発から20キロ圏外への放射性物質による影響は小さいとする経済産業省原子力安全・保安院の報告書を了承した。同原発から20〜30キロ圏内で設定した「緊急時避難準備区域」の解除に向け、大きな条件をクリアしたことになる。
安全委は一方で、同区域内の除染やモニタリングが解除の条件になると言明。地元と協議しながら進めるよう政府に求めた。
報告書は、東電が3日夜、保安院に提出した「原子炉への注水は安定している」との報告書などを踏まえ保安院が作成。4日、安全委に意見を求めた。
水素爆発については、1〜3号機で防止のための窒素注入が続き、新たに発生する水素は蒸気と一緒に放出されているため発生リスクは低いと判断。万一、水素爆発が起きた場合でも、1号機から20キロの地点で予想される空間線量の「影響は小さい」とした。
また、原子炉への注水機能が止まっても30分〜3時間程度で復旧できるとの東電の報告を「応急措置として適切」と評価した。
3月の事故時の原子炉注水中断が最長約14時間だったことを受け、1〜3号機への注水が15時間中断した場合も想定して解析。燃料の大半が既に溶融している現状を前提とすると、原発から20キロ地点の年間被ばく線量が0.65ミリシーベルトと予想される。安全委は「避難などの必要が生じる可能性は低い」と結論付けた。【岡田英】
◇解説 密室で議論される「万が一」
緊急時避難準備区域の解除を検討する大前提は、福島第1原発の安定だ。保安院が4日、原子力安全委員会に提出した報告書は、水素爆発や炉心溶融といった緊急事態が再び起きる可能性は「万が一を想定しても低い」と結論づけた。
しかし、3月11日の大津波に伴う事故はすべて「想定外」の事態から起きており、今回の安全委のお墨付きには疑問も残る。班目春樹委員長は4日、「万が一」について「厳しい仮定を重ねていくと際限がない。常識的なところで(報告書を)了承した」と説明した。
結論に至る過程も不透明だ。安定の鍵を握る原子炉への注水システムが故障した場合の対策などを報告するよう、保安院が東電に指示したのは今月2日。報告期限は3日だった。東電は締め切りを守り、4日には保安院が報告を踏まえて安全委に報告。同日、安全委は追認した。実際には約1カ月前から関係者と意見交換し修正を重ねたというが、こうした経緯はいっさい公表されなかった。「非常に技術的で、公開しても内容をつかみにくいと思った」と久木田豊委員長代理は弁解する。住民の暮らしにかかわる問題が、一方的な配慮から「密室」で議論される状況は早く改善されるべきだ。【岡田英】
被災6県の12万棟が津波で全壊
浸水した建物は岩手、宮城、福島など6県で計約21万9千棟にのぼり、このうち全壊した建物は半数以上の約12万棟にのぼることが4日、国土交通省の現地調査で分かった。全壊した建物のほとんどが、浸水時の地面から海面までの深さ(浸水深)が2メートル以上だったことも判明した。
被災地に残った建物の津波の痕跡などを分析。福島第1原発事故の警戒区域など、立ち入りが制限されている地域については調査できていない。
これによると、浸水区域面積は6県(青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉)で計約535平方キロ。うち浸水深が2メートル以上の区域は4割超を占めた。津波で完全に流されたり全壊した建物は、浸水深が1・5〜2メートル以下の区域では34・5%だったのに対し、2〜2・5メートル以下の区域では72・4%に跳ね上がった。
同省は今後、木造や鉄筋コンクリートなど建物の構造別に被害状況などを詳しく分析し調査結果を自治体に提供、復興計画に活用してもらう方針。